今はもうない―SWITCH BACK
今はもうない―SWITCH BACK


″「どう違うんですか?洗練と最適は」
「最適でないものを許すことが洗練だ」
「はい」萌絵は嬉しくなって頷いた。「それは、私もそう思いました」――"『今はもうない』より抜粋
ジャンル:文庫
評価:☆☆☆☆☆

このシリーズを読んできて久し振りに、やられた!と思った。でもそれは、本としての構成に、秘密が隠されているとは思わなかったので、やられた!と思ったのであって、犯人が誰だとかそういったところ(普通のミステリでは重視するべき部分)ではない。

多分、ネタバレにはならないだろうから、書くけれど、この本で、とても好きなシーンがある。それは、「第一幕」で、笹木という人物が、真っ白なワンピースを着て真っ白な小さな日傘を差した若い女性に川辺で出会うシーンである。冒頭に、やられた!と書いたけれど、このシーンを読んでいる時も、実は、やられた!と僕は思った。こんな出会いの小説は、ずるいじゃないか・・・と思った。だって、これはもう一種の理想である・・・付け加えると男性の(笑。男性は、こういう女性(清楚なイメージ漂う)に弱いのではないか?と思う。少なくとも、僕は弱い・・・・・・もちろん、理想化されていて、実際にはそんなことはありえないと頭のどこかで分かっていながら、でもそれを求めてしまうというような感じである(笑。
そんな男心をくすぐるシーンを、最初に描かれてしまったら、それはもう読み進めるほかに、すべきことが見つからなくなる。今思うと、著者の策略にこの時既にしっかり嵌っていたのだろう。

それにしても・・・・・・今気付いたけれど、この本のタイトルが物語のキーポイントの1つになっているので、これから読まれる方は、ご参考までに・・・・・・。
2006.06.25 Sun l 森 博嗣 l COM(0) TB(0) l top ▲
幻惑の死と使途―ILLUSION ACTS LIKE MAGIC
幻惑の死と使途―ILLUSION ACTS LIKE MAGIC


"「わからない」萌絵は首をふった。「理解できません。先生がおっしゃっていることがわからないわ」
 「言葉自体が名前だからね」犀川は微笑んだ。「ごめん、ちょっとしゃべり過ぎた。君に理解できるように話せないのは、僕の能力不足に起因している。どんな場合にも、受け手に責任はない」――"『幻惑の死と使途』より抜粋
ジャンル:文庫
評価:☆☆☆☆
前作よりも、扱っている内容がマジック・・・だったからなのか、すらすら滞りなく読めた気がする。いやこれは決して、自分がマジックが出来る、手品が上手いとかそういうことを言いたいのではなく、前回のような完全な密室系の・・・どちらかと言えば、ミステリの王道のような作品は、読んでいてどうにもしっくりこないのだ。今回のは、ミステリに付き物のトリックを、マジックと組み合わせていることによって、読み手にそれを特に意識させることが無い。つまり、ミステリを読んでいるという感覚が、前回よりは少し薄れているという印象を受けた。

余談だが、このS&Mシリーズは、内容が進むに連れ、犀川よりも萌絵の活躍するシーンが増えているような気がする。初期の頃の犀川は、もっと全ての事象に対し、冷静だったはずだけれど、この本では、犀川の弱さといった部分も明かされている。当たり前だが、彼も人間だったのだな・・・と思う一方、初期の頃の犀川に憧れていた自分としては、少し残念に思う気持ちも拭い切れない・・・。もちろん、その逆の意見を持つ方も沢山いらっしゃるだろうけれど。
2006.06.05 Mon l 森 博嗣 l COM(0) TB(0) l top ▲
封印再度―WHO INSIDE
封印再度―WHO INSIDE


"人間の意識とは、本来それほど不連続なものだ。
 大切なことが、幾つも忘れられていく。――"『封印再度』より抜粋
ジャンル:文庫
評価:☆☆☆
久し振りに、中断していたS&Mシリーズを読み始めた。この本では、犀川と萌絵の関係が急速に展開する。これまで読んできて、このままダラダラーと行くのかなーと思っていたので、この展開には正直驚いた。ただし、これはあくまでも推理小説なので、そちらが重視であり、この本においてもそれは例外ではない。これが、自分にとってはどうにも苦手らしい。ある事件が起きて、それが何故起こったのか?ということを考えていくのが推理小説の醍醐味であろうけれど、毎回、答え合わせのページを読んで納得する形なのだ。要するに自分は推理力がまるで無い。そんな奴が、このシリーズを読んでいること自体、既に本末転倒であるが、事件の行方や犀川の明快な解決法よりも、キャラクターの関係の方に惹かれて自分は読んでいるのである。

それにしてもこのタイトルはすごいと思う。個人的に、英語のタイトルの方・・・「who inside」が気に入っている。あと、各章ごとに英語のタイトルが付けられているが、その英語が、実は日本語のタイトルと全く異なっているというのも興味深い。
2006.06.03 Sat l 森 博嗣 l COM(0) TB(0) l top ▲
ZOKU
ZOKU

”「え?スカートめくりって?」
「お前なあ」ロミは顔をしかめる。「とぼけやがって」
「いや、知らないっすよ。スカートめくり?なんかのゲームですか?」
「嫌だねぇ・・・・・・。ぜぇっ・たぁい・知ってる。お前が知らないで、誰が知ってる?」
「ホント、知らないっすよ」
「小学校のときやっただろ?」
「いいえぇ。何です、それ・・・・・・」――”『ZOKU』より抜粋
ジャンル:ハードカバー
評価:☆☆☆

スカートめくり・・・って、もう絶滅したんだろうか(笑?いや、ヒーラムが小学生の頃はまだ、これ残ってた記憶がある。なので、上記に抜粋した部分を読んだ時、あー、最近ではそうなのかーと思ったんだけれど、どうなんだろう・・・?いや、別に、スカートめくりという明らかに変態男子の欲望と一部の変態女子の露出願望がマッチした文化をいつまでも後世にまで残したいなんて思わないが・・・うーむ(何。
・・・・・・でもこんなことを書いておきながら、何だけれど、ヒーラムはスカートめくりをした事がある(驚愕の事実。
小学生の低学年だったと思うが、何故か、女子の数人が教室の脇にあるベランダと呼ばれる場所に並んでいて、男子が一斉に端から順番にスカートをめくっていったのである。正に、それはカレンダーをめくるかのごとく(違。で、その意味不明な光景を何とはなしに眺めていたら、ヒーラムにお呼びがかかったのである(笑。すごくドキドキしたような気がするが、いわゆる真面目な子どもだったので、最初は良心が「止めておけ!」と言っていたが、欲望とは恐ろしいもので、気がついたらスカートをめくっていた(コラ。付け加えると、友人達のピアプレッシャー(集団においてプレッシャーを掛けられること)に負けた・・・ということもあるが。
でも、不思議なのは女子がそれをされて恥ずかしい素振りは見せても、堂々と協力していた点である。いや、むしろ男子の反応を見て楽しんでいた気もする(笑。やはり女子の方が数段も上手(うわて)だったなーと今になってつくづく思う次第である。
以上の体験自体は、もう何年も前の記憶なので、本当に朧気であり、もしかすると、一切合財がヒーラムの妄想という事もありえる(えっ。

ふぅ、さて感想へ。
森博嗣関連で読んだ本。登場人物は個性的で相変わらず魅力的。でも、それがこの1冊では十分描ききれていない。続きを書こうと思えば、まだ全然書けるだろう、という本であり、単純に、ユーモアを優先した作品。

面白かった・・・最後のどんでん返しがあるが、これはちょっと強引な気がしないでもなかった・・・。
・・・ほとんどスカートめくりの話だけで終わってしまった事がここに来て少し悔やまれている(苦笑。
2006.05.13 Sat l 森 博嗣 l COM(0) TB(0) l top ▲
人間は考えるFになる
人間は考えるFになる

ジャンル:対談形式
評価:☆☆
土屋賢二という哲学の教授と、森博嗣が対談を行ったものを収録した本。
どちらかの人を知っていないと、全く読んでもつまらないと思うし、そもそも読む気がしないと思う。
土屋という人物はある意味、一般の人に近い感覚を持っているのに対し、森の発言にはしばしば、変わっているな―と言う印象を受けた。例えば、この世界に自分が一人だけになったとしても、何十年も生きていける自信がある・・・と、言っている。これが彼の本心ならば、本当にすごいと思う。
自分は、孤独自体は肯定できると考えているし、その点では彼に近いのかもしれない。けれど、何十年も1人で生きていくということは、出来ないと思う。孤独を好んでいても、どこかで人を求めている部分が自分の中にはあると思うし、他者なしでは生きられないという事は明らかだから。

彼はやはり変わっているが、それに対して肯定も否定もしたくはない、と自分は思う。
2006.04.20 Thu l 森 博嗣 l COM(0) TB(0) l top ▲