2005022850937c09.jpg"「僕らの人生には偶然も必然もない」・・・―『真夜中の五分前』より抜粋"

side-Aの感想をアップしたアップした際に、双子がどうだ・・・とか言っていたけれど、あれは撤回します(おぃ)。この本はそんな単純じゃない気がします。それは、このside-Bを読んで気が付きました。
この本は、もうアイデンティティの領域に足を踏み入れています。ええ、自我なんですが、それよりも、
「自分は一体何者なんだろう?」とか
「他者は自分にとって本当に存在するのか?」とかを色々と考えてしまう事が人間、誰しもあると思いますが、正にそれなのです。書いている事が自分でも意味不明ですが、とにかく、こう書くしかありませんでした。

もう少し書いてみると、それはつまり、自己や他者の不確実性ということだと思うのです。例えば、
自分という存在は本当はここに存在していないのではないだろうか?今見えている世界も、脳が勝手に作り出した虚構の世界で、すべては幻ではないのか?といった考え方です。余談ですがこれは、カントの考えと非常によく似ています。
また、自己が不確かなら他者も不確かということになります。自分にとってその相手がどれだけ大切であっても、その他者自体が絶対、その他者であるという事が言い切れるのか?Aさんは本当に、Aさんだと証明できるのか?ということです。

余計、意味不明になりました(苦笑)。
とにかく、そういうことをラスト辺りに考えていました。・・・やっぱり、自分は頭がおかしいのだと思います・・・。

これを読んで、読む気がしなくなってしまった方、安心してください。この本は、色々と考えさせられますが、サラッと読もうと思えばサラッと読める恋愛小説ですから。
2005.02.28 Mon l 小説 l COM(0) TB(0) l top ▲

20050228a80ee829.jpg”「わかりませんね。そんなこと、考えたこともなかったです」
「何が楽しいのか、考えたことがない?」と沢野さんは言って、ぼやくように続けた。
「どんな人生だよ」
でも、まあ、そういう人間もいるのかな。
理解したのではなく理解を諦めたように、沢野さんは頷いた。―『真夜中の五分前』より抜粋”

まず、ここで抜粋している文章ですが、本文の内容とはほとんど関係がありません。ただ単純に自分の好きな言葉を拾っているだけです。

さて、これは、side-Aということで、前編です。もし、付き合った相手が双子だったら、あなたは何故そのどちらか一方を選んだのですか?・・・という問いが一貫してちりばめられている感じがします。

自分は正直、この作家のストーリーはそんなに好きではないかもしれません。でも、作品全体を通した世界観は好きなのです。・・・多分、こう書いても、理解してくれる人はほとんどいないと思いますが・・・。

というわけで、やや否定的に書いてしまいましたが、実はオススメです(笑)。
2005.02.28 Mon l 小説 l COM(0) TB(0) l top ▲

20050221f7beb09d.jpg”伝えなくてはならないことと、伝えてはいけないこと。その狭間に立ったとき、いつも軽い眩暈のような感覚に僕は襲われる。もちろん余計なことは何も言わなければいいのだし、それに越したことはないのだろうけれど、しかしもしこの世のすべての人間たちがそんな風に寡黙に生きているのだとしたら、世界はどんなに味気のないものになってしまうだろうか。
寡黙な歌などありえない。
寡黙な詩もありはしない。
意味があるにしろそうでないにしろ、世界は伝えなくてはならないことを胸一杯に抱えた人間たちで溢れているのだ。―『別れの後の静かな午後』の「悲しまない時計」より抜粋”

この本の中で一番好きな文章です。
この本は短編形式です。この作家は、前に、『パイロット・フィッシュ』を読んだ際に、結構、気に入った作家だったので、期待して読みましたが、その面ではちょっと期待はずれでした。どのストーリーもどこか似通っているのです。同じ作家だから、それはある程度仕方のないことかもしれませんが・・・。本当に細かい部分の言葉の持つ美しさというのは、際立っていると思うのですが、ストーリーの面でどうしても、少し物足りなさを感じてしまう作品が幾つかあったのです。
この作家は、短編より長編の方が、自分は好きかもしれません。まだ他の作品を読んでいないので、断定は出来ませんが・・・。

20年後とかに読んだら、もっと感想も変わるかもしれない・・・そんなことをふと思った小説でした。
2005.02.21 Mon l 小説 l COM(6) TB(0) l top ▲

2005021707bb8d69.jpg”それでも二人が再会してしまったことを「運命」と呼んでもいいのだろうか。違うだろう。そこには小さな必然がからんでいたのだから。”―『カタブツ(バクのみた夢)』より

真面目に生きている大多数の人達が主人公。この本の中では、「バクのみた夢」と「無言電話の向こう側」が好きです。作者があとがきでも語っていますが、本当にありふれた地味で真面目な人達が主人公の小説って、実はかなり少ないのかもしれません。そんな人達にスポットを当てて書いた・・・と作者は言っているのですが、でもやっぱり小説になるだけの非日常がそっと絡んできます。ただそれは、誰にだって起こること、日常と非日常のボーダーラインは存在しないということかもしれません。

真面目に生きている人達が読めば、うんうんと頷ける本ではないでしょうか(笑)。ただ、このタイトルはちょっとね・・・否定的過ぎませんか(苦笑)?


2005.02.17 Thu l 小説 l COM(2) TB(1) l top ▲

20050215a1e4e429.jpgこの本の評判は、前から聞いていた。感動する本としては、必ずこの本の名前が挙がる理由を、読み進めていくうちに納得した。

とにかく、物語の展開のさせ方が、非常に上手い。後半部分は、特にそれが顕著だ。ハラハラドキドキさせられて、全てを読み終えた後に、まるで壮大な一人のライフストーリーを、実際にその体験者から聞かされたかのような錯覚に陥った。

正直に言って、よく出来すぎている感はある。ストーリーの起伏、展開・・・何もかもが緻密に計算されている。だからと言って、それが表面に出てくるものではなく、読んでいる間は気付きもしない所が作者の力量であろう。

わざとストーリーには触れずに書いた。この本は何も知らない方が絶対、面白い。読んで後悔した人がいるとすればそれは、あまりにもこの本の中に入り込んでしまって抜け出せない人くらいだろう。・・・言ってしまえばそれは自分なのだが(苦笑)。

何のためらいも無く、自信を持ってオススメできる一冊です。是非、読んでみてください。
2005.02.15 Tue l 小説 l COM(0) TB(0) l top ▲

2005021286931ed1.jpg”「戦争というものを、あなたの持つイメージだけで限定してしまうのは非常に危険なことです。戦争というものは、様々な形で私たちの生活の中に入り込んできます。あなたは確実に今、戦争に手を貸し、戦争に参加しているのです。・・・」”―『となり町戦争』より

ただ、純粋に怖いと思った。それはきっとこの小説の中の話が現実として実現してしまいそうな予感が、心のどこかで感じられるからなのかもしれない。
戦争は、いつの間にか自分の生活の中に浸入し、それに気付くのは、大切なものを失ってからだ。この本の中では戦争という言葉が使われているから、まだ分かりやすい。けれど、実際の社会では、戦争なんて言葉は使わないだろう。日本では使えない。そこがものすごく恐ろしい。いつのまにか、日本は戦争と同等の事を行う国になるのかもしれない・・・とさえ思う。そしてそれに自分達は気付くことなく、いつの間にか戦争の中へ引きずり込まれていくのだ。

この本を小説として楽しむ事は十分可能だ。けれど、それだけに留まらせない何か大きな力をこの本は持っているように思う。
今、正直にいうと、この本を読んだ誰かとむしょうに話がしたい。どんな風に感じたのか?思ったのか?率直に色々と聞いてみたい。

2005.02.12 Sat l 小説 l COM(0) TB(0) l top ▲

20050210b0a92059.jpg手っ取り早く内容を解説してしまえば、現代社会に警鐘を鳴らす本です(何)。最初の部分は、読んでいてもただただ絶望的になります(苦笑)。ただ、現実は本当に絶望的なくらい、勝ち組と負け組に二部されているのだな・・・とちょっと悲しいくらいに実感。
日本社会に広まっている希望の格差・・・これを知りたい人は、是非一読を(笑)。

これ、実は大学のテキストに指定されていたので、購入したものです。でなければ、絶対買わないだろうな・・・と思うし(苦笑)。普段は、テキスト類はこちらにはアップしないのですが、これは、結構なるほどーと思ったので、ご紹介しました。
2005.02.10 Thu l 考えたい気分 l COM(0) TB(0) l top ▲

20050201d3075a4d.jpg”「ねぇ、何が可笑しいの?」
「うん・・・・・・」僕は頷きながら吹き出した。「なんでもないよ。なんか、ただ、もう僕らとっても親しいような気がして」
「私たちって、親しくない?」
「昨日会ったばかりだよ」
「あれ、そうだっけ」彼女はとぼけた顔をして、すぐにくすっと笑った。”――恋之坂ナイトグライドより

これは短編集ですが、やっぱり自分は推理が必要な奴より、観念的?な作品の方が好きですね。この短編の中なら、「恋之坂ナイトグライド」や、「私の岸はこの夏のアウトライン」の雰囲気なんかとても好きです。それにしても、このネーミングは一体どうやって思いつくのだろうか・・・(苦笑)。

2005.02.01 Tue l 森 博嗣 l COM(0) TB(0) l top ▲