海外旅行の大王様―地上最強の裏ワザ集
海外旅行の大王様―地上最強の裏ワザ集


ジャンル:文庫
評価:☆☆☆
海外旅行に行く前に、読むべき本。特に、これまで海外旅行をしたことがなくて、でも漠然と海外という言葉の響きに何となく憧れを持っている人に是非読んでほしいと思う。大切な休日を果たして本当に海外で費やすことがベストなのか・・・ということも書いてあって、単なる海外旅行のノウハウ本に留まっていない所が面白い。
少しだけ惜しいな・・・と思うのは、この著者はこの本のほかにも同じような本をこれまでに書いてきたらしく、これはその総まとめ的な感じの本ということだ。つまり、所々で、この著者は、自分の他の著書を推薦して、「ここから先は以前に○○という本で書いたので、そちらを読んで下さい・・・」という感じになっている。確かに、著者としては他の本で書いているのだから、それを繰り返すことは必要ないと考えるのが普通かもしれない。けれど、前作を全く読んでいない読者からすればこれはストレス以外のなんでもない。
もちろん、このマイナス点を加味しても、この本に書いてある情報は海外旅行の際に有利になると思う。特にマイレージに関しての記述は、とても参考になった。

2005.10.25 Tue l エッセイ l COM(0) TB(0) l top ▲
変身
変身


“「ドナーの脳です。それが僕の脳に影響を与えているとは考えられないのですか?」
「なぜそういうふうに思うのかね」
「脳移植について、昨夜ひと晩考えてみたのです。僕の脳の一部が事故で破壊され、それでその部分に他人の――ドナーの脳片が移植されたわけですよね」
博士は黙って頷いた。――『変身』より一部抜粋”
ジャンル:文庫
評価:☆☆☆

ものすごく大きな問題提起をしている小説だ。世界初の脳移植手術が行われたのだが、移植された脳は、実は殺人者の脳で、主人公は自己のアイデンティティーを少しずつ失っていく・・・。これを小説だと安心して読めるほど、科学の進歩は遅くない。
日本にいる間に、生体肝移植の成功の記事などを見たことがあったが、果たして、脳移植はどうだっただろうか・・・と記憶を手繰ってみたが思い出せない。ただこれは倫理的な観点、脳の適合性の問題もあるから、多分まだ行われていないと思われる。でも、最近ではニュースで移植が成功したというものを見ても特に驚かないのではないだろうか。それだけ移植というものが、世間一般でも未だに特別ではあるにしろ、ありえないものではなくなってきた・・・ということだろう。だからいずれ、脳移植が成功したという記事を読んでも、それに対して特に興味もなく読み飛ばしてしまうかもしれない。当たり前・・・になってしまうということはある意味で本当に怖いことだと思う。

この主人公は、ある日偶然幼い女の子を助けようとして、銃で撃たれて死亡してしまう。普通ならここで人生は終わりのはずだった。けれど、彼の脳は、その後自殺した彼を殺した殺人者の脳と十万分の一の確率で適合性を一致させていた。そこでその殺人者の脳は彼に移植されたのだが、手術後の彼は、手術以前の彼の性格、趣味などを徐々に失って次第に殺人者の性格へと変貌していく。移植された部分は一部だけなのに・・・。
確かに小説としてのある種ストーリーが作られた感じがあるのは否めない。でも、この小説はそこに主眼を置いていない。ラストの数ページを読むと、この作者の臓器移植に関する考えがそのまま述べられていると思われる記述がある。この作者は単に小説としての面白さのみをこの本で追求したいわけではないと思う。小説を通して、彼自身の一種の問題提起を行っているのだろう。

この小説に書いてあることが事実で、脳移植を行った場合、その被験者にドナーの性格の影響が出る・・・という事が分かっているのなら、脳移植というのは一切行われることはないかもしれない。いや、行ってはいけないと思う。でも、だとしたら他の部位の移植はどうなるのか?臓器移植には、貧困という問題も孕んでいるのだ。でも、その一方で助かりたい、今移植しなければ命を落としてしまうという人がいて・・・。
臓器移植は多角的な視点からのいくつもの問題が交錯するので、本当に難しい。自分の中で今の時点で、臓器移植が是か非かを答えることは出来ない。本当の所を言ってしまえば、その当事者になって初めて臓器移植という問題の回答を得ることが出来るのかもしれない。移植について考えるきっかけになる一冊。

2005.10.18 Tue l 小説 l COM(0) TB(0) l top ▲
初恋
初恋

“休み時間のざわめき。
校庭から聞こえてくるランニングの足音。
授業がはじまるときに、机と椅子をガタガタいわせる音
スピーカーから流れてくるチャイム。・・・・・・
昼が近くなると、給食室から漂ってくるスープやおかずの匂い。
ペンキの剥げかかった窓枠の桟。
その窓越しに差し込んでくる太陽が、床に投げ掛ける四角い影の組み合わせ。
床に塗られたワックスの匂い。――『初恋』より一部省略抜粋”
ジャンル:文庫(ホラー)
評価:☆☆☆☆

この本は怖い。本当に怖い。この書評を読んでいる方の中には、そういうのが苦手な方もいると思うので、抜粋箇所は、個人的にノスタルジックな表現が気に入った部分にした。
小説に限らず映画でもホラー系は個人的にかなり好きな部類だけれど、この小説のような「現実には普通ありえない、でももしかしたら・・・こういうことも起こりえるかもしれない・・・」という現実に即したホラーというのは本当に怖いと思う。幽霊とかが出てくるものよりよっぽど。
題名に惹かれて、純粋なラブ・ストーリーを期待してはいけない。いや、これはもしかするとある意味で本当のラブ・ストーリーかもしれない。青春期の学校というカテゴライズされた空間の中で、中学生だった女の子はある人を好きになる。思い切ってその好きな彼に告白したのだけれど、彼は自分のことを好きではなかった・・・その思いは消えることも無くずっとずっと彼女の心に残り続けて消えることは無かった・・・。
読了した今でも、これはやっぱり小説だからだろうな・・・という非現実的な感想を持つ自分の中に、でもほんの少しだけ、こういうことが現実にもありそうだよな・・・なんて思えてしまう所は、やっぱり怖い。
ホラー好きは必読・・・嫌いな人は・・・読まないほうが無難かもしれない。
もし、この本を既に読了された方がいらっしゃれば是非感想を聞かせてください。

2005.10.10 Mon l 小説 l COM(0) TB(0) l top ▲
パリのトイレでシルブプレー!
パリのトイレでシルブプレー!

“こないだ、近所の喫茶店に行ったら、いい年こいたオッサンが、コーヒーすすりながら、息子の愚痴をこぼしてた。「うちの息子、中学生なんだけどさー、勉強できねーんだよ。ありゃ、ダメだね。ろくな大学入れねーよ」とか言ってる。
私は、「ダメなのは、てめーだ、オヤジ」と心の中で思ってた。自分の息子をダメだなんて思う親は、ダメだ。たかが勉強苦手なくらいで、ひとりの成長過程の人間を、「ありゃ、ダメだ」なんて決め付ける感受性が、コイツの人生の限界を示している。・・・・・・こーゆーバカ親が横行しているから、子どもは不幸である。・・・・・・私はべつに、「一流大学なんか出たって意味ねーよ」と言ってるワケではない。それはそれで意味のあるコトなんだろう。ただ、世の中は、たったひとつの価値観だけで動いてるんじゃない。オモテ道があればウラ道もあり、ケモノ道だってあるんだよ。・・・・・・――『パリのトイレでシルブプレ〜〜!』より一部省略抜粋”
ジャンル:文庫(エッセイ)
評価:☆☆☆

元々、旅行記を読むのは好きな方だった。この本もそのような類の本だと思っていたが、読んでみたら、最初の40ページ程度で海外旅行の部分は終わってしまい、後は著者の失敗談と言うのか、とりあえず旅行とは全然関係ない路線に進んでしまったので、ちょっと題名に裏切られた感じだった。この著者のことは、テレビの影響からか、ブランド物を大量に買い込んでいる変なおばさん(失礼)という認識しかなかったのだけれど、『ゴクドーくん漫遊記』シリーズで、小説家としてデビューしていたのだということを、これを読んで初めて知った。
こちら(NZ)に来て、この手のくだらない笑いを誘うものを読んでなかった反動からか、読んでる途中で色々と笑わせてもらった。この本を読んだからって、何の役に立つわけでもないけれど、この著者の率直で鋭い意見(上記に抜粋)には、とても共感できた。でも、こういうマジメな記述はほんの一部で、九割方は、本当にどーでもいーことばかりなのだけれど。
肩肘張らずに、暇な時にサラッと読める本。

2005.10.10 Mon l エッセイ l COM(2) TB(0) l top ▲
水の手帳
水の手帳

“「他人を責めるのは簡単だし、ましてや自分をつまらない人間だと思うのは簡単で都合のいいことなんだ。難しいのは自分を肯定することだよ。自分をちゃんと肯定した上で生きることができたら、人は自由で楽しいだろうと思うよ。・・・」――『水の手帳』より抜粋”
ジャンル:文庫
評価:☆☆☆

この小説では、主人公が、フランス、アフリカ、そして韓国へ移動する。このように舞台を一箇所に絞らない小説というのは、時として、それぞれが中途半端に終わってしまうことが多いが、この作品ではしっかりとそれぞれの国の記述が成されている。
主人公は、母の死をきっかけに、自分探しの旅に出る。それは自分のルーツを辿る旅でもあるけれど、次第に主人公自身の中である種の逞しさが生まれていく過程は、読んでいて爽快だ。
水の手帳というタイトルにもあるように、この小説の中には、水をテーマにした記述が多い。他人に影響される・・・というとマイナスのイメージがついてしまいがちだが、果たしてこの世の中で全く他者の影響を受けないで生きている人がどれだけいるだろうか。人間はやはり根本的に弱い。色々な人と出逢ってその過程の中で、沢山の影響を受けながら日々を過ごしているのではないか。そしてそれは、決してマイナスではなく、プラスに転じていくはずだということがこの小説からは伝わってくる。水が流れていくように、主人公は旅を続けていく。その先にあった答えは、小説の中では曖昧に濁されている。けれど、それは読者自身がそれぞれに想像をしてそれぞれの答えを見つけていけば良い。たとえそれが見つからなくても、それはそれで良い・・・全ての問いに答えが存在するわけではないから・・・。

2005.10.03 Mon l 小説 l COM(0) TB(0) l top ▲
バカの壁
バカの壁


“あるていど歳をとれば、人にはわからないことがあると思うのは、当然のことです。しかし若いうちは可能性がありますから、自分にわからないかどうか、それがわからない。だからいろいろ悩むわけです。そのときに「バカの壁」は誰にでもあるのだということを思い出してもらえば、ひょっとすると気が楽になって、逆に分かるようになるかもしれません。――『バカの壁』より抜粋”
ジャンル:新書
評価:☆☆☆
書かれてある内容は、確かに興味深い。この本には彼の考え方がずばり示されている。基本的に的を射ているものが多いけれど、所々、賛同できかねる記述があった。一番気になったのは、「原理主義」という言葉の使い方だ。彼は、「原理主義」を批判しているけれど、9.11のテロを起こしたのは、正確に言えば「原理主義」ではない。そもそも「原理主義」の全てが全て、危険思想を持っているわけではない。彼らは簡単に言ってしまえば、昔の良かった時代に現代を戻そう、と呼びかけているに過ぎない。実際に、イスラム諸国に存在する無数の「原理主義」組織は、その大半が穏健なものだ。ただ、その中で、ごく一部の組織が過激な行動を取っているために、一般には誤解されやすい。彼は、国際問題の専門ではないから仕方ないと思うけれど、「原理主義過激派」という記述の方が的確であろう。
それにしても、この本は彼の本ではあるけれど、実際に彼が執筆をしたわけではない。彼の考えを新潮社の編集部が聞いてそれをまとめたものだ。よって、文体も全て「です・ます調」で統一してあるし、読み易い。「バカの壁」というタイトルもさることながら、この本がここまで売れたのはその読み易さにも一因があると思う。
どうしてもタイトルの意味を汲もうとしてしまうけれど、タイトルにはたいした意味は無い。この本の内容は今の日本に対する彼の危機意識が書かれてある。これを読んでどう思うかは人それぞれだけれど、その思考の自由を「まえがき」で述べている点は鋭いと思う。逆に、「まえがき」が無かったら、評価はもっと低くなっていたに違いないから。

2005.10.03 Mon l 考えたい気分 l COM(0) TB(0) l top ▲