空色ヒッチハイカー
空色ヒッチハイカー

″「ファンダンゴ?」
レジのお姉さんは、どうやらその映画のことを知らないようだった。
「ケビン・コスナーの映画です」
「ああ、ケビン・コスナーね」――"『空色ヒッチハイカー』より抜粋
スタイル:小説(ハードカバー)
評価:☆☆☆☆

 青春って何だろう。
 
 この本の主人公は18歳で。突然、兄のアメ車を借りて、ひたすら走り続ける。その途中でヒッチハイクして人を乗せながら・・・・・・。この設定自体が青春ではないか、と言われれば、正にそうかもしれない。幼少時代ではなく、かと言って、中年になってしまった人には当て嵌まらない不安定な時期。
 青春=若さなのかもしれない。全てが、分かったような気がしていて、周りの大人たちがどうしようもなく愚かに思える。働くということから逃避して、目の前の現実をただひたすら楽しんで生きる。異性との恋も、お約束のように、物語に織り込まれている。もちろん、以上の全てをひっくるめて、その青春の中にいる当人が、心のどこかでこの時期がいつまでも続かないことに気付いている。それが、どこか、切ない。

 冒頭に引用した映画のセリフが、この小説を数倍魅力的にしている。ものすごく引用したいセリフがあるのだけれど、ここではあえて遠慮した。皆さん自身で確かめて欲しい。

 辻内智貴が好きなら、きっと好きだと思う。あのどこか懐かしい感じとか、個々のさりげないけれど、素敵なサブエピソードとか。冒頭は正直、魅力を感じなかったが、最後まで読んでみると納得できる良書だった。
2007.07.26 Thu l 小説 l COM(0) TB(0) l top ▲
女王の百年密室―GOD SAVE THE QUEEN
女王の百年密室―GOD SAVE THE QUEEN

″でも、彼女はもういない。きっともう、死んでいるだろう。
僕は、そう思った。
不思議に、悲しくなかった。
そのときは、悲しくなかった。
悲しくなったのは、ずっとずっと、あとのことだ。
人間は、思い出して、悲しくなるんだ。
ゆっくりと思い出して、そして・・・・・・、
何かと比較して、悲しくなるんだ。
――"『女王の百年密室』より抜粋
スタイル:小説(ハードカバー)
評価:☆☆☆☆

 感情は、その場面における適切さが社会から要請されて発露する場合が多い。例えば、お葬式に行った時に、涙を流す・・・・・・など。
 泣きたい時に泣ける人を、僕はすごいと思う。悲しいと思ったときにすぐ涙が出る人は、ある意味、その社会で場面で、適切に振舞うことが出来る人なのだから。僕にはそれが、出来ない。僕は僕自身の身体をコントロールすることが出来ていない。人間の感情は複雑だから、泣きたい時に泣けない時だってある・・・・・・という言い訳を口にするのが精一杯。

 書評へ。
 森博嗣の本質に近い作品だと思う。物語自体云々というよりも、登場人物の志向に、自分がシンクロしやすいので、読み易かった。
 
 女王、神、復讐・・・・・・といったものがテーマになっている。この作品はシリーズになっているので、次作も是非読んでみたい。
2007.07.22 Sun l 小説 l COM(0) TB(0) l top ▲